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日別アーカイブ: 2007年12月15日
クリスマス考
クリスマスとはChrist Mass(クライストマス)、直訳すれば「キリストのミサ」で、イエス・キリストにミサを捧げる日という意味になる。
キリストとは、メシア(ヘブライ語で油を注がれし者)のギリシャ語訳でChristos(クリストス)に由来し、原語表記でX(カイ)から始まるのでXmasと略記する。X’masは誤りである。古代イスラエルでは王や位の高い祭司には即位の時に頭に香油を注ぐ儀式があったからで、転じて救世主を意味するようになった。
ヘブライ語文化圏で始まった宗教にギリシャ語が使われていることを、奇異に思われる方も多いだろう。しかしこのギリシャ語が、キリスト教がイエスの死後わずか200年足らずの内に世界宗教に発展したことのキーポイントとなっている。聖書原典の多くはヘブライ語で書かれているが、紀元前3世紀から1世紀半ばにかけてモーゼ五書がギリシャ語に翻訳された。七十二人の訳者により七十二日間かかったことから「セプテュアギンタ(七十人訳)」ともよばれる。当時ローマの一属国にしかすぎないイスラエル地方の方言が、ギリシャ語という時の国際語に翻訳されたことにより、聖書がヘレニズム文化圏全体に普及したということもその理由の一つとなっている。
新約聖書のマタイ、マルコ、ルカの3共観福音書にはイエスの誕生日に関する明確な記述はない。イエスの誕生日が12月25日となったことには諸説があるが、ミトラ教の冬至の祭りと重なったというのが、一番有力な説だ。ミトラ教とはイラン、インド地方で普及していた太陽神を主神とする多神教で、3世紀頃に初期キリスト教とローマ国教を争うほど勢力のあった宗教だ。もちろん牧畜民の宗教であるユダヤ教には農耕民的太陽信仰はない。古くからあった宗教と新しいキリスト教が習合(synchrotize)したということだろう。
ミサ(mass)とは「最後の晩餐」になぞられて行われる信仰告白の儀式で、カトリック教会で行われるものを言う。多くのプロテスタント教会でも似たような儀式が行われているが、ミサとは言わず礼拝と呼ぶ。ミサ通常文はキリエ、グローリア、クレド、サンクトゥス、ベネディクトゥス、アニュスデイの6つの祈りから構成されるが、これ以外の祈りが加えられることも多い。これに聖書朗読や司祭の有難い、だが退屈な説教があり、約1時間弱で終わる。
ナザレのイエスをキリスト(救世主)と仰ぐのがキリスト教であり、クリスマスとはイエス・キリストのご生誕をお祝いしてミサを捧げる日というのが正しい意味ではある。
だが、わが国では国民の多くが慣習的にしても仏教徒であるのにかかわらず、これだけ大々的にクリスマスをお祝いする国も、世界で珍しいであろう。もちろんコマーシャリズムに踊らされているなどの批判もあるだろうが、率直にいってクリスマスを祝い、新春を寿ぐことができる国に生まれたことを素直に感謝すべきなのであろう。
都心で人気のある教会では、イブの日には、にわか信者が多数発生し信徒がミサに預かれないという事態が発生しているので、整理券を配布している。中にはそのままホテルへ直行というカップルも多いそうだが、生きているということを大いに楽しむべきであり、批判することはなにもない。人間は命を次の世代にリレーすることにより永遠の生命を授けられたのであり、死までのプロセスこそが生であり、多分に反キリスト教的意見ではあるが、歓び楽しむことこそが生きているという確証なのだ。
世界中の半数以上の人々がお祝いする日なのだから、私たちも大いに楽しもうではないか。
(Photo:六本木・東京ミッドタウンのクリスマスツリー/江戸切子をイメージして作られたそうだ。クリックすると大判写真が見られるぞ!また下の「聴く」マークをクリックするとクリスマスソングがきけるぞ!曲目は「O Holy Night」だ。この稿、おにいちゃん書く 謝謝)